■03月24日(日)
土曜日のこと。世間は休みだけど、僕は仕事だった。その仕事がちょっと不安を抱える形で終えてしまい、少しモヤモヤした気分だった。このまま悶々としたまま家に帰って、休日である日曜日を迎えていいのだろうか。何か発散すべきじゃないだろうか。そう考えた僕は、仕事終わりにゲームセンターに向かうことにした。
ゲームセンターは、たまに仕事終わりに行くことがある。僕が大好きなゲームであるビートマニア(音楽ゲーム)の筐体があるのだ。それもかなり古いタイプのもので、僕が中学校に通っていた時くらいのものだから10年以上前のものなのである。当時の懐かしさに浸りつつ気持ち良くプレイできるため、モヤモヤした気持ちをスッキリさせるためによくプレイしに来ているのだ。
今日もいつもと同じく、モヤモヤした気持ちをスッキリさせる目的でゲームセンターに来た。「よし、気持ち良くプレイして気分良く日曜日を迎えよう!」という思いで、ビートマニアの筐体の前に立った。
そこで、僕は異変に気づいた。
…筐体の画面が真っ暗なのである。
もしかしたら電源が入ってないのか。そう思い、筐体の後ろに回ってコンセントを探し、電源が入れなおしてみた。そして筐体の前に再び立った。
再び立って見たその筐体の画面には、砂嵐のようなものが吹き荒れており、さらに黒板を引っ掻いたようなキーキーという音が鳴り響いていた。明らかにバグっている。つい数日前までは普通に稼働していたというのに。僕の気持ちはさきほどよりもモヤモヤした。
プレイし終えた時のように意気揚々とではなく、意気消沈しながら歩いてゲームセンターを出た。これからどうしようか。このまま帰っていいのだろうか。さきほどよりもモヤモヤしたこの気持ち。これを発散するにはどうすべきか。ふとゲームセンターの周りを見渡すと、バッティングセンターが目に入った。
これだ。バッティングセンターで発散させよう。機械が故障していることなんかない。なぜなら開店しているのだから。僕は意気揚々とバッティングセンターに入った。
店のおじいちゃんに300円支払い、球速110km/hコースに入った。仕事で体をふんだんに動かしていることだし、学生の頃よりも運動神経は良いだろう。それに、僕は高校の体育の授業で首位打10割を記録したこともある。気持ち良くバットを振れるはず!機械から放たれるボールに目線を合わせ、ソフトバンクホークスの松田のごとくコンパクトに構え、バットを振った。
ブンッ!
…スカッ。
ブンッ!
…スカッ。
ブンッ!
…スカッ。
あ、
当たらない…。
バントを試みたり、フォームを変えたり色々と試行錯誤したものの、一球もバットに当たることはなかった。そうだ、忘れていた。僕は学校でドのつくほどの運動神経の悪い人間だった。体育で打率10割を打った時もソフトボール球だったし、球速も60kmほどだった。当たりもポテンヒットばかりだったし、内容そのものは非常に悪かった。なんという失態…。結果的にもっと気持ちがモヤモヤする自体になってしまったが、せめてもの救いは、他に客がいなかったことだ。でも、帰りに店のおじいちゃんに言われた「ありがとうございました」の言い方がどこか皮肉がかっていたような同情をされていたような気がして、さらにモヤモヤした気持ちになった。
僕の気持ちはすでに折れかけていたが、このまま引き下がるわけにはいかなかった。ドのつくほどの運動音痴であるものの、ドのつくほどの負けず嫌いでもあるのだ。他に発散できるものはないのか。いや、発散できなくていい。何かで遊ばないと気が済まない。仕事終わりに速攻で家に帰っていればよかったとならないような結果が欲しい。内容はどうでもいい。
僕はもう一度ゲームセンターに行くことにした。でも、場所はさきほど行ったところとは違うところだ。そこは大型デパートの中にあり、中高時代に遊んでいた記憶もある。そこに当時遊んでいた筐体があるとは思えないが、それでも全然構わない。なんでもいいから楽しみたい。その気持ち一点のみだった。
意気揚々と大型デパートに入る途中、そのデパート前に手をつないで歩くカップルを見つけた。僕は軽く舌打ちをした。本来ならキレてもいいくらいの幸不幸の差だが、今の僕はそれよりもゲームで遊ぶことのほうが大事だった。
軽くカップルを見下ろしながら、デパートの中でゲームセンターを探す。最後に来たのが数年前なので内装が結構変わっていたのである。僕は懐かしさと新しさを感じながら歩きまわった。
…しかし、
ゲームセンターは見つからなかった。
筐体1つすら見当たらない。なぜだ。あるはずなのに。あったはずなのに。懲りずに15分ほど探したが、何もなかった。なんでもいいから遊ばせてくれ…。僕はもっとモヤモヤした気持ちになった。
もう僕の心は崩壊寸前だった。何も遊べない。遊ばせてくれない。ただゲームがしたいだけなのに。気が狂ったのか、デパートの女性下着売り場に入りたくなったので、そのあたりを堂々と歩きながら、女性用下着(主にブラジャー)をガン見した。
さきほどまでのモヤモヤした気持ちが、違う意味でのモヤモヤした気持ちになりつつあったが、デパートに入る前に見かけたカップルが楽しそうに買い物をしている姿を見つけた。
僕はそこで冷静になった。
こちとら仕事帰り。
カップルはたぶん休日。
こちとらゲーセン探し。
カップルは買い物。
こちとら不幸。
カップルは幸せ。
こちとら下着あさり。
カップルはお互いの体あさり。
死にたい。どうしてこんなに差があるのか。この場から逃れたい。帰りたい。家に帰りたい。モヤモヤした気持ちとか負けず嫌いの心はすでに消え、ただ帰りたい気持ちでいっぱいになり、うつろな目をしながら家に帰った。
結局なんのために出かけたのかさっぱりだった。ただ時間が無駄に経過しただけ。なんの楽しみもなく、ただ悲しくなるだけだった。この悲しみをどこかに向けることなどなく、いつもと同じようにパソコンの前に座る。楽しい楽しい休日は、まだはじまったばかりなのである。
■03月21日(木)
今日は世間的には休日だったらしいんだけど、シフト制の僕には関係なく職場へ出勤したわけで。最近は仕事で失敗続きでスランプだなあと思ったり、こんだけ失敗するんだからたぶん向いてないし仕事やめたほうがいいんじゃないかなあと思ってたりもしてて、今日も何かやらかして怒られたりするんじゃないかとビクビクしてた。
実際、今日は結構うまくいった。何かつまずく事もなかったし、ただ忙しく感じただけだった。今日は最良の日だ!結構うまい具合にいっている!気を利かせた結果、逆に良くないことになることが多々あったけれども、今日は何も意識しなくてもいい方向に動いた!今日はツイてる日だ!と思った。
その仕事帰り。僕のバイクの前輪の空気が結構抜けていて、曲がるときに不安定になってしまうので、そろそろ空気を入れないといけないなと思ってガソリンスタンドまで行くことにした。そういえばガソリンも結構減ってたし、一石二鳥だなあと思った。
そのガソリンスタンドで、まずガソリンを入れてみた。満タンになったなあーと思って適当なところでガソリン注入をやめると、出てきたお釣りは501円。500円玉が出てきたのである。おぉーうまい具合に500円玉が出てきて得したなあと思った。やっぱり今日はツイている。なんていい日なんだ。
そのあと、前輪の空気を入れることに。店員さんにタイヤの空気を入れてもらおうと「すいませーん、タイヤの空気入れありますかー?」と聞くと、「ありますよ!はい!」と手渡された。入れてくれないの……。少しがっかりしたが、まぁ自分で空気の量を調整できるならそれでいいかと思って自分で空気を入れることにした。
…ん、難しい。
どうやるんだこれ。
というかこれ「スタッフ用」って書いてあるんだけど。
使っていいのかこれ。
まぁいいや。いろいろいじってみよう。
…。
あ、いけた。
こうやるのか。
おぉー、タイヤ膨らんできた!
こんな感じなんかー、すごいなー!
うおー!パンパンになってきた!すげー!
どれくらい入るんだろう。
タイヤがカッチカチなんだけど!
まだ入るのかn―――
パンッ!!!!
…あ。
タイヤが破裂した。
僕はゆっくりと周りを見渡した。特に意味はない。店員も客もおらず、僕だけがただ悲しい思いをしてるという状況だった。今日はツイてると思ったのに。良い事ばっかり起こってると思ってたのに。どうしてこんなことに。やっぱり1日に1回は必ず不幸は訪れるものなのだろうか…。
破裂した前輪のタイヤのバイクにまたがり、ふらふらと運転しながらバイクショップへ。修理にいくらかかるんだろうか。幸いにもお店は開いており、店の人にタイヤ交換の値段を聞いた。「6500円」だった。結構するが、さきほどガソリンを入れた時の500円玉が使えることが発覚。こんなところで良い事が起こった。やはりツイてる日なのだろうか…??そんな事は絶対ないと思うが…。
タイヤ交換はあっさりと終わった。早速運転したみると、タイヤの空気がパンパンすぎてハンドルがフラフラする。これはこれで運転が難しい…。タイヤ交換をしたにもかかわらず、結局ふらふらと運転しながら家に帰ったのであった。
今日は…果たして良い日だったのだろうか…。そんなことを考えている間に、今日という日は終わりを告げていた。結論が出ないまま、明日はやってきた。それでは、おやすみなさい。
■03月05日(火)
先週の日曜日、小学校の同級生である友人Aから「今日ひま?」とメールが送られてきた。こいつの誘いはいつも急で、その日に会いたいときに送ってくるのである。事前連絡など一切ない。とはいえ、僕はその時ひまだったし、住んでる場所が遠いためになかなか会えないということでOKの返事を送った。
待ち合わせ場所である飲食店に向かうと、そこには僕と同じように急に呼ばれて集まっていた人が2人いた。話を少し聞いたら、どうやら僕と同じように急に呼び出されたそうだ。困った人だなあ、という話をしていたが、僕はその話を聞きながら、他人事ではないなと少し感じていた。
他に呼び出された人は小学校の同級生ではなく、中学校の同級生で、住んでいた地域も違っていた。距離にしても、僕や小学校の同級生の家からでは20分以上はかかる。僕は友人Aの「急な誘い」というものを小学校の頃から知っていた。学校帰りに家に帰って一人でゲームをしていると、事前連絡もなしに自宅のチャイムを鳴らされたものだ。かくいう僕も、その友人Aの家のチャイムを鳴らし、相手の返事を待たずして家に上がり込むという、自分の家に近い感覚で遊びに誘っていたのだ。
中学校の同級生の話を聞くと、そういうことは絶対にあり得ない事だそうだ。やっていた僕もそう思う。たとえば、急に当日に誘われた時、たとえ暇であったとしても、明日のことや、これからやるべきことを考えて断る事もよくあるそうで、今回はたまにしか会えないというのと、逃げられそうにないという理由で会うことを承諾したとのことだった。中学の同級生は極めて真っ当で常識的だなと感じたし、これが地域差なのかなと少し思った。
僕が小学校の頃住んでいた地域は他の地域とは隔離されたような場所にあり、市と市をつなぐ山道の途中にある小さな住宅街なのだ。だから少し他の地域と価値観や常識がズレているのかもしれないし、もしくは僕や友人Aの頭がおかしいだけなのかもしれない。そう思い、僕は昔話で弾んでいる中、これからどうしようかという話になり、友人Bを呼ぼうと提案した。
友人Bは僕や友人Aと同じ小学校の同級生だ。今まで意識したことはなかったが、もしかすると僕や友人Aの価値観と似ているかもしれない。それを確かめたいという気持ちがあった。もちろん久しぶりに会いたかったというのもある。そこで、僕や中学の同級生の時と同じく「急な誘い」をしてみることにした。
というよりも、メールアドレスを知らないということがある。たまにしか会わないが、友人の一人ではあるので知らないのは少しおかしいかもしれない。しかし、僕も友人Aも、友人Bのメールアドレスを知らない。なぜなら、誘うときはいつも家の玄関のチャイムを鳴らして遊びに誘っていたからである。これも同郷ならではの価値観なのかもしれない・・・。
少し話がそれた。友人Bの家に到着し、事前連絡など無く、晩御飯の時間にほど近い18:40に友人B宅のチャイムを鳴らした。すると友人Bの父親が出て、友人Bがいるか尋ねるといるとのことなので呼んでもらった。
すると、風呂からあがった友人Bが家から姿を現し、「遊びに行こう」と誘ってみた。すると、少し戸惑いながらも快くOKしてくれた。完全に小学校の時と同じノリである。そして、その友人Bは誰かを道連れにしたかったのか、近くに住んでいる友人Cも誘おうと言い出したのだ。僕や友人Aと同じ考え方だ。友人Aが僕を誘い、そして僕が友人Bを急に誘ったように、友人Bもまた友人Cを急に誘った。中学の同級生はこれらの常識はずれの行動に戸惑いつつ笑うしかないといった表情を浮かべていた。
友人Bを誘った時のように、友人C宅のチャイムを鳴らした。すると友人Cの母親が出てきたので友人Cがいるかどうか尋ねたところ、いるとのことなので呼んでもらうことにした。すると間もなくして現れた。どうやら疲れて寝ていたようだが、友人Aが来ているという旨の話をしたところ、遊ぶのを快くOKしてくれた。やはり同郷だからなのだろうか。
そのメンバーで飲食店に向かい、そこで晩御飯を食べることになった。その席で、友人Aが結婚式の話をした。
友人A「そういえば友人Dの結婚式に出席するかどうかのハガキって、もう出した?」
近々結婚式を行う友人Dも小学校の同級生だ。なので、古くからの友人である僕や友人A、B、Cに結婚式の招待はがきを送ったのだそう。その締切日は3月6日で、どんなに遅くても3月の頭には送らなければならないのである。そんななか、僕ら小学校の同級生たちは――
僕「もう締切日がかなり近かったから昨日(=3月2日)出したよー」
友人B「おれまだ送ってないわ。そろそろやばいし明日には送ろうかなって思ってる」
友人C「そういや送らないとあかんなと思ってはがき見たらやばかったから昨日出したわ」
友人A「様とか消すのめんどくさいからまだ出してない」
この有様である。誰もまともに締切日前に余裕を持って出していない。友人Dは6枚ほど招待状を送ったそうだが、僕ら以外には友人Dの高校の同級生1人と、友人Eに送ったらしい。今のところその2人からしか返事が来ていないと昨日嘆いていたと友人Aが話してくれた。友人Dの高校の同級生のことは知らないが、友人Eは小学校の同級生である。もう友人Eからはがきが届いているらしいが、友人Eは僕らが小学2年生の頃に転校してきたのだ。なので、厳密には同郷とはいえないのかもしれない。なので友人Eだけ先に招待はがきを送っていても不思議ではない。
「急な誘い」にも快く引き受けたり、結婚式の招待はがきをギリギリまで出さなかったりと、やはり、幼稚園や小学校から同級生であり、地域がずっと同じで一緒に遊んでいた同級生だから価値観が一致しているのだろう。同級生であることを意識して話をしてみて、やはり同郷だから色々と一致してしまうんだなということをすごく実感した。
「友達を大切にしろ」というが、それがどういうことなのか今までの僕にはあまり理解できなかった。社会に出ても友達はできるし、その人と楽しく話せればいいじゃないかと思っていた。でも、今日話してみて思ったのは、古くからの友人というのは深い部分での価値観がとても似ているし、一致しているところがあって安心できる。一生を共に出来る人ってそういう人じゃないかなと思うから、こういう友達は大事にしたほうがいいなと思った。