■「HA.NA.GE」最終章−闘争−
私は絶望に震えていた。
解決方法がわからない。手がかりがない。
「どうしたらいいんだろう…。」
その時、彼から一通のメールが届いた。
::昨日はごめん!
::大事な約束だったのに台無しにしてしまって…
::昨日のお詫びとリベンジがしたいんだ。
::もしよかったら今日、昨日と同じ時間、同じ場所に来てくれないかな?
彼はこの事を反省してくれていた。
彼は鼻毛という呪縛から開放された。
少し気分が晴れたけど、私はまだ鼻毛と戦い続けている。
とてもありがたい誘いだったけど、
私はまだ鼻毛に勝てていない。勝たなければならない。
今日中に勝って、彼に喜びのメールをしよう。
そして、昨日を忘れよう。
そして、鼻毛を忘れよう。
そう、誓った。
私は自分の力ではこれが限界だと悟り、
パソコンを開いて鼻毛を処理する方法を探した。
すると、あっさり見つかった。
鼻毛カッター。
これを鼻に突っ込むだけで鼻毛は無くなるそうだ。
なんて遠回りしてしまったんだろう。
値段も1000円程度で手頃とのことで、早速、電器店まで買いに行った。
電器店にはたくさんの鼻毛カッターがあった。
私はその中でも少し高い2000円の鼻毛カッターを買った。
少しでも鼻毛を抹殺したい。そういう思いからだった。
家に帰り、早速、鏡を見ながら鼻毛カッターを鼻に突っ込む。
ジョリジョリジョリジョリ!!
勢いよく鼻毛が切れていく。
本数も結構あったようで、
鼻毛カッターが詰まるのではと心配になったが、
高い値段の鼻毛カッターだからなのか問題なかった。
お金をつぎ込んで正解だったと心のなかでガッツポーズをした。
両穴とも、あっさりと剃り終えた。
「こ、こんな簡単なものだったの…。」
今までの鼻毛と私の戦いはなんだったのだろうか。
すぐさま彼氏に、了承の旨のメールを送り、
昨日とは違う、昨日よりも派手めな、それでいて白を基調とした服装に着替えた。
もうあの忌々しい黒色の毛とは、今日でおさらばだ。
私は昨日と同じように電車に乗り、待ち合わせ場所に行った。
彼はまだ来ていなくて、とても楽しみに待っていた。
早く来ないかと待っていると、彼が現れた!
「お待たせ!」
彼がさわやかに笑顔で言う。
「ううん、私も今きたとこ」
昨日と同じセリフを言い合う。
二人で昨日を取り戻す。そういう気持ちが通い合っている。
私たちの関係はこんな事で崩れるようなものじゃない!
そう言うように、お互いに笑い合った。
楽しく談笑していると、
彼は突然、私のほうをジロジロと見つめてきた。
鼻毛があるかどうかの確認なのだろうか。
大丈夫。私は昨日までの私じゃない。
私は胸を張り、どうぞ見てくださいと言わんばかりに顎を上げ、
鼻の穴を彼の方に向けた。
「ねぇ。」
彼が言う。
「ひげ…生えてない…?」